外出願望

日々つれづれ－１７トップへ
　私は、ここんところ、「万葉集読解」に没頭している。「万葉集読解」以外は朝晩の食事を作って食べ、体操を行う日々である。幸か不幸か、おかげで体調の方も回復基調にあり、体重も４ｋｇ戻ってきた。
　実は、マンションの階段が急で、かつ、手すりがなく、家居するしかない。それでも、私自身に何の不満もなく、着々と書き進めている。
　ただ、一つだけ、残念でたまらないことがある。今、春たけなわである。外出して、あちこち巡り歩くのが好きな私。例年なら、神社、寺、城址、公園等々をかけずり回っている季節である。
　梅林や桜並木を訪れてはご満悦な私である。名も知らない地味で小さな花々に出合うと、うれしくてたまらない。そんな私であるから、名所旧跡や花々を巡り歩くのは、なんといっても、春は絶好の季節である。なのに私は一歩も外に出られない。
　一歩外に出れば、路傍に咲く様々な花々が咲き誇っている。別に遠くまで足を伸ばさなくともよい。一歩、ほんとに一歩外に出るだけでよい。花々に出合うのに苦労しない。すぐ近くに豊臣秀吉を祀った中村公園がある。
　私の家のベランダからは、周囲に家々が立ち並んでいて、小さな花々はもとより、梅の木一本、ソメイヨシノ一本見当たらないのである。
　人間は自然が見当たらないと落ち着かない。
　「万葉集読解」に没頭している日々で、少しも不満はない。が、一歩も外に出られず、絶好の春たけなわという季節が、残念でたまらない。
　　　今は春桃も桜も咲きにけりどこか虚しき季節過ぎゆく　　　　　　（桐山芳夫）
　　　路傍にはバラ咲きたるやせめてバラひと目なりとも目に入らぬか　（桐山芳夫）
　　　　　　　　　　　（２０１９年４月１１日）