日々つれづれ-12トップへ
私はもう20年余も同じ理髪店に通い続けている。6年ほど前、実習生という形で二人の若者が入ってきた。男女二人のベトナム人である。二人は20歳前後と目され、二人とも感じのいい若者だった。以来、私の店に対する気持は一変した。漠然と通っているに過ぎなかった店が、そこでなければならない店に変わった。実習生の男の子は親切でケレンミがなく、国の話などもよくしてくれた。女の子の方はほとんど会話をしなかったが、色白で日本人そのものという顔立ちだった。余分な口を利かない控えめな子で、まるで一昔前のヤマトなでしこを彷彿させた。はっきり言って私の好みの女性だった。将来二人は一緒になって国に帰り、理髪店を行うだろうと想像された。いずれにしろ、若い血が入ったというだけで、私は月に一度その店に顔を出すのが楽しみになった。
時は過ぎ去って、今年の春、店に顔を出すと二人ともいなかった。店長の話によると、色々道具を買いそろえて帰国したという。二人は一緒になって国に帰り、理髪店を行うだろうという私の想像があたっていたと思った。祝意の気持と共に、なぜか私は寂しさを覚えた。何しろ女の子は、色白で、余分な口を利かない控えめな、私の好みの子だったので、もう見られないと思うと寂しかったのだろう。
ところが、翌月に顔を出すと彼女だけは店に残っていた。「一緒に帰国したかと思ったよ」と話しかけたら彼女はほほえんで「何で?」と反応した。以来半年余、私は店に顔を出すのが楽しみだった。数日前顔を出したら彼女はいなかった。店長に尋ねると、今度は本当に帰国したのだという。「本当にいい子でしたね」と訊くと「そうそう、昔の日本人女性という感じで、本当によくやってくれましたよ」とひとしきり彼女の話題で盛り上がった。今度こそ彼女を見かけることはなくなった。そんなことはあり得ないが、気持のどこかで私は彼女に恋焦がれていたのだろうか。
(2015年11月12日)
私はもう20年余も同じ理髪店に通い続けている。6年ほど前、実習生という形で二人の若者が入ってきた。男女二人のベトナム人である。二人は20歳前後と目され、二人とも感じのいい若者だった。以来、私の店に対する気持は一変した。漠然と通っているに過ぎなかった店が、そこでなければならない店に変わった。実習生の男の子は親切でケレンミがなく、国の話などもよくしてくれた。女の子の方はほとんど会話をしなかったが、色白で日本人そのものという顔立ちだった。余分な口を利かない控えめな子で、まるで一昔前のヤマトなでしこを彷彿させた。はっきり言って私の好みの女性だった。将来二人は一緒になって国に帰り、理髪店を行うだろうと想像された。いずれにしろ、若い血が入ったというだけで、私は月に一度その店に顔を出すのが楽しみになった。
時は過ぎ去って、今年の春、店に顔を出すと二人ともいなかった。店長の話によると、色々道具を買いそろえて帰国したという。二人は一緒になって国に帰り、理髪店を行うだろうという私の想像があたっていたと思った。祝意の気持と共に、なぜか私は寂しさを覚えた。何しろ女の子は、色白で、余分な口を利かない控えめな、私の好みの子だったので、もう見られないと思うと寂しかったのだろう。
ところが、翌月に顔を出すと彼女だけは店に残っていた。「一緒に帰国したかと思ったよ」と話しかけたら彼女はほほえんで「何で?」と反応した。以来半年余、私は店に顔を出すのが楽しみだった。数日前顔を出したら彼女はいなかった。店長に尋ねると、今度は本当に帰国したのだという。「本当にいい子でしたね」と訊くと「そうそう、昔の日本人女性という感じで、本当によくやってくれましたよ」とひとしきり彼女の話題で盛り上がった。今度こそ彼女を見かけることはなくなった。そんなことはあり得ないが、気持のどこかで私は彼女に恋焦がれていたのだろうか。
(2015年11月12日)
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