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万葉集読解・・・181(2945~2963番歌)

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     万葉集読解・・・181(2945~2963番歌)
2945  玉梓の君が使を待ちし夜のなごりぞ今も寐ねぬ夜の多き
      (玉<梓>之 君之使乎 待之夜乃 名凝其今毛 不宿夜乃大寸)
 「玉梓(たまづさ)の」は枕詞説もある。梓(あずさ)の小枝に文(ふみ)を結びつけて使いの者を通して意志のやりとりをしたことを意味している。
 「あなたからの手紙をもってやってくる使いを今か今かと待っていて寝られなかった。そんななごりなのか今でもなお寝られない夜が多い」という歌である。

2946  玉桙の道に行き逢ひて外目にも見ればよき子をいつとか待たむ
      (玉桙之 道尓行相而 外目耳毛 見者吉子乎 何時鹿将待)
 「玉桙(たまほこ)の」は枕詞。「外目(よそめ)にも」は「傍目(はため)に見ても」という意味。「いつとか待たむ」は現代風な言い方をすれば「いつの日か彼女を待つ身になりたい」という意味である。
 「道ですれちがって、いわば傍目(はため)に見てもきれいな子。いつの日かその子を(彼女にして)待つ身になりたい」という歌である。

2947  思ひにしあまりにしかばすべをなみ我れは言ひてき忌むべきものを
      (念西 餘西鹿齒 為便乎無美 吾者五十日手寸 應忌鬼尾)
 現代的感覚ではややもたもたした表現に見える。が、結句の「忌むべきものを」でぴしっと決まっている。「思ひにしあまりにしかば」は「思いあまって」という意味。「すべをなみ」は「~ので」の「み」。「言ひてき」は「口に出してしまった」という意味。
 「恋心に思いあまってどうしようもなくなったので、ついその思いを口に出してしまった。滅多なことでは口に出してはならないのに」という歌である。
 異伝歌は次のように記されている。
 或本には「門に出て恋しさにうずくまってしまったのを人に見られ~」とある。また或る本には「どうしようもなく、外出して恋人の家の辺りを見に~」とある。さらに柿本人麿歌集には「水中に出入りするにほどり(かいつぶり)になってやっとやって来たのを、人に見られて~」とある。
 以上、この異伝歌は内容的に2947番歌ではなく、次歌(2948番歌)の前置きかも知れない。

2948  明日の日は其の門行かむ出でて見よ恋ひたる姿あまたしるけむ
      (明日者 其門将去 出而見与 戀有容儀 數知兼)
 「明日の日は」は「明日」のこと。「あまたしるけむ」は「十分に分かるでしょう」という意味。
 「明日私はあなたの家の門の前を通ります。門を出てみてごらん。恋にやつれた私の姿が十分に分かるでしょう」という歌である。

2949  うたて異に心いぶせし事計りよくせ我が背子逢へる時だに
      (得田價異 心欝悒 事計 吉為吾兄子 相有時谷)
 「うたて」は「しきりに」という意味。「異(け)に」は「いつもと異なって」という意味で、要するに「うたて異に」は「いつになくしきりに」という意味である。「いぶせし」は「気分がすぐれない」という意味。「事計りよくせ」は「何か心が晴れるようなこと」という意味。
 「いつになくしきりに心がどんよりしているの。あなた、何か心が晴れるようなことないかしら。こうして逢っているときくらい」という歌である。

2950  我妹子が夜戸出の姿見てしより心空なり地は踏めども
      (吾妹子之 夜戸出乃光儀 見而之従 情空有 地者雖踐)
 平明歌。
 「私の思うあの子が、夜、戸口に出てきた立ち姿を見てからというもの、心は上の空、土は踏んでいるけれども」という歌である。

2951  海石榴市の八十の衢に立ち平し結びし紐を解かまく惜しも
      (海石榴市之 八十衢尓 立平之 結紐乎 解巻惜毛)
 「海石榴市(つばきち)の」は椿市の開かれた所。「八十(やそ)の衢(ちまた)に」は四方八方から道が寄り集まって来る所。奈良県桜井市金屋が著名。「立ち平(なら)し」は「地面を踏みならし」という意味。若い男女が寄り集まってきて歌ったり踊ったりする、いわば歌垣(うたがき)が開かれた場所。
 「椿市の開かれた海石榴市(つばきち)の広場でみんなで地面を踏みならし踊ったとき、その際結び合った着物の紐を解くのが惜しい」という歌である。

2952  我が命の衰へぬれば白栲の袖のなれにし君をしぞ思ふ
      (吾<齡>之 衰去者 白細布之 袖乃<狎>尓思 君乎母准其念)
 「白栲(しろたへ)の」は「白い布の」ないし袖の美称。「なれにし」は袖にも君にもかかる「慣れ親しんだ」を導く。
 「私の命が衰えてきて真っ白な袖やあなたに慣れ親しんだことばかりを思っています」という歌である。

2953  君に恋ひ我が泣く涙白栲の袖さへ濡れてせむすべもなし
      (戀君 吾哭<涕> 白妙 袖兼所漬 為便母奈之)
 「白栲(しろたへ)の」は前歌参照。「せむすべもなし」は「どうしようもありません」という意味。 「あなたに恋い焦がれ、泣きこぼれる私の涙は袖さえ濡らし、どうしようもございません」という歌である。

2954  今よりは逢はじとすれや白栲の我が衣手の干る時もなき
      (従今者 不相跡為也 白妙之 我衣袖之 干時毛奈吉)
 「白栲(しろたへ)の」は前々歌参照。「今よりは逢はじと」は作者の心情ではない。「~すれや」とあるので相手の言葉である。
 「もうこれからは逢わないとおっしゃるのですか。白栲の着物の袖が乾く時がありません」という歌である。

2955  夢かと心惑ひぬ月まねく離れにし君が言の通へば
      (夢可登 情班 月數多 干西君之 事之通者)
 「月まねく」は原文に「月數多」とあるように、「何ヶ月も」という意味。
 「夢ではないかと心が騒ぎました。何ヶ月も離れ途絶えていたあなたから便りが届いたのですもの」という歌である。

2956  あらたまの年月かねてぬばたまの夢に見えけり君が姿は
      (未玉之 年月兼而 烏玉乃 夢尓所見 君之容儀者)
 「あらたまの」と「ぬばたまの」は枕詞。「年月かねて」は「長い年月にわたって」という意味である。
 「長い年月にわたってお逢いしてませんね。でもあなたの姿はその間も夜の夢に出てきてお逢いしてますわ」という歌である。

2957  今よりは恋ふとも妹に逢はめやも床の辺去らず夢に見えこそ
      (従今者 雖戀妹尓 将相<哉>母 床邊不離 夢<尓>所見乞)
 「今よりは」は「これからは」ということ。「見えこそ」は「見えてほしい」という意味。
 「これからは恋い焦がれようと、彼女に逢えないだろうな。が、床の辺から去らず、せめて夢に出てきて欲しい」という歌である。

2958  人の見て言とがめせぬ夢にだにやまず見えこそ我が恋やまむ
      (人見而 言害目不為 夢谷 不止見与 我戀将息)
 「言(こと)とがめせぬ」は「噂になる」という意味である。「我が恋やまむ」は「恋に苦しむ心も安まる」という意味である。
 「人が見とがめて噂にならない夢の中、そんな夢の中だけでも逢うことができれば、私の恋の苦しみも休まるだろうに」という歌である。
 異伝歌は「人の目が多いので直接逢えないが」とある。

2959  うつつには言も絶えたり夢にだに継ぎて見えこそ直に逢ふまでに
      (現者 言絶有 夢谷 嗣而所見与 直相左右二)
 「うつつには」は「現実には」という意味。
 「現実には音信不通になろうとも、せめて夢の中に出てきて続けて逢ってほしい。直接逢える時が来るまで」という歌である。

2960  うつせみの現し心も我れはなし妹を相見ずて年の経ぬれば
      (虚蝉之 宇都思情毛 吾者無 妹乎不相見而 年之經去者)
 「うつせみの」は「現実には」とか「この世のこと」等々の意味。「現(うつ)し心」は「生きている心」のこと。
 「この世に生きている人の心ももう私にはない(甲斐がない)。彼女に逢えないまま何年も経ってしまったので」という歌である。

2961  うつせみの常のことばと思へども継ぎてし聞けば心惑ひぬ
      (虚蝉之 常辞登 雖念 継而之聞者 心遮焉)
 「うつせみの」は前歌参照。「うつせみの常のことば」は「世間一般の通り一遍の言葉(外交辞令)」という意味である。
 「世間一般の通り一遍の言葉(外交辞令)とは思うけれど、続いて聞かされるとひょっとしてと心が乱れます」という歌である。

2962  白栲の袖離れて寝るぬばたまの今夜は早も明けば明けなむ
      (白細之 袖不數而<宿> 烏玉之 今夜者<早毛> 明<者>将開)
 「白栲(しろたへ)の」は「白い布の」ないし袖の美称。「ぬばたまの」はおなじみの枕詞。
 「今宵はあの子の袖から離れ、一人寝なければならない。こんな夜など明けるなら早く明けてしまえばよいのに」という歌である。

2963  白栲の手本寛けく人の寝る味寐は寝ずや恋ひわたりなむ
      (白細之 手本寛久 人之宿 味宿者不寐哉 戀将渡)
 「白栲(しろたへ)の」は前歌参照。「手本寛(たもとゆた)けく」は「袖をゆったり広げ」という意味である。「味寐(うまい)」は安眠のこと。「恋ひわたりなむ」は「恋続けることだろう」ということ。 「人々は袖をゆったり広げ、安眠につく夜なんだろうが、この私は寝られずずっと恋続けることだろう」という歌である。
           (2015年10月23日記、2019年3月16日)
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