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Channel: 古代史の道
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芭蕉の落馬

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 芭蕉は馬に乗ることが出来た。私はそのことを知らず、「野ざらし紀行」から「奥の細道」に至る様々な旅はすべて徒歩で回ったに相違ないと思い、さぞかし大変な旅だったろうな、と思い込んでいた。ところが、芭蕉の句の中に次の一句がある。
徒歩ならば杖突坂を落馬かな   (松尾芭蕉)
 「えっ、芭蕉は馬に乗れたのか」と驚いたが、これは無知の私故のことで、考えて見れば、武家の子であった芭蕉が乗馬のたしなみがあるのも当然だったのだ。
 芭蕉の同卿の門人土芳は『横日記』に「桑名よりところどころ馬に乗りて~」と記し、「季の詞なし」と記している。先掲句について、「芭蕉発句全集」は「季語もなく駄句の一つ」としている。杖突坂(つえつきさか)は東海道四日市宿の近く(四日市市釆女町)の坂で、芭蕉はそこで落馬したのである。
 私はこの句は芭蕉の代表句に入れてよい秀句だと思う。芭蕉には挨拶吟と呼ばれる何を歌っているか分からない句が多い。季語はないけれど、誰にも分かる、かつ、自身が経験したことを発句した秀句としか思えない。
 芭蕉の意外性を見せられた気がして、私の好きな一句である。

    ウバメガシ抜けて真夏の羽豆神社    (桐山芳夫)
           (2019年5月22日)
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