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Channel: 古代史の道
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強引な秋

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 古今集に「秋きぬと目にはさやかに見えねども風のおとにぞおどろかれぬる」という歌がある。藤原敏行のあまりにも有名な歌だ。「それと気づかぬ内に秋がやってきた」というのが歌意である。
 ところで、近年の秋は突然かつ強引にやってくる。特に今年の場合は本州各地に未曾有の災害をもたらしている。台風はまず九州にやってくるのが通例。しかる後に本州にも押し寄せてくる。ところが、台風17号、18号等は日本列島を直撃、特に18号は関東、東北と広範囲にわたって経験したことのない大雨に見舞われ、鬼怒川の決壊等一帯が海のような状態に見舞われた。
 秋は暑くもなく寒くもなく、その到来を誰しも待ち望んでいる。その気分を歌にしたのが「秋きぬと目にはさやかに見えねども風のおとにぞおどろかれぬる」だ。秋は気づかない内にやってくる。それがわが日本文化の中に長らく根付いてきた。
 台風は野分けといって昔から歌に詠まれてきた。与謝蕪村の「鳥羽殿へ五六騎いそぐ野分かな」が有名だが、会津八一の「野分して隣に遠き山家かな」といった句もある。
 だが、台風18号のように9月に入ってまもなく強引にやってくるのは詩情も何もあったものではない。
    秋の風急激に来て戸を押さう伊勢湾台風の記憶まざまざ
 台風の脅威は否応なく襲ってくる恐怖である。詩情に浸かる気分など沸きはしないし、そんなゆとりもない。天然の災害だからやむを得ないといえばやむを得ない。が、近畿、東海から関東にかけて秋口に滅多にやってくることのなかった台風や水害。近年の災害多発により、次第に日本文化が遠ざかっていくのを覚えるこのごろである。やはり秋口は「風のおとにぞおどろかれぬる」の範囲にとどまってほしい。
           (2015年9月18日)
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