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「万葉集読解」の巻14が終了した。ほっとしている。一般読者の方には直接関係しないと思うが、このほっとした気持ちを共有していただけるとありがたいと思って筆を執った。ちょっと状況を簡単に説明すると、巻14は全20巻中特異な巻である。登載歌は238首に及ぶが、すべて東国在住者の歌である。東海、関東、北陸、東北を含み、この巻特有の東国訛りがちりばめられている。奈良、京都等の、いわば中央歌とは一風変わっている。方言は当時の資料がないので巻14自体が資料となる。このため、その読解には少なからず難渋した。一例だけ挙げてみよう。3566番歌は次のようになっている。
我妹子に我が恋ひ死なばそわへかも神に負ほせむ心知らずて
興味のある向きは本文によられたいが、本歌は「そわへかも」という用語のために難解歌とされている。事実ある書は「古来難解。後考を待つ。」としている。
私は腕組みして考えた。「そわへかも」を睨んでいる内に「ひょっとしてこれは東国訛りではないか」と思った。そこで、こういう「へ」の使い方をしている例はないかと丹念に調べてみた。その結果こういう「へ」は数例出てきた。私は、この「へ」は「~ない」すなわち「~ず」のことに相違ないと結論づけた。「そわへかも」は「添わずかも」らしいと分かった。私は本文に、次のように記した。
「『彼女に恋い焦がれて死んだなら、彼女と添い遂げることもなく、神(運命)のせいにし、我が心を彼女に知らせないままになる』という歌である」と・・・。
もとより私の読解の適、不適は読者に委ねたいと思う。
ことほどさように、巻14は読解に難渋することが少なくなく、いわば孤独の作業だったわけである。なにごともすんなりとはいかないもんだな、と思い知り、気を引き締めて巻15に取りかかろうと思う。
。 (2016年6月10日)
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「万葉集読解」の巻14が終了した。ほっとしている。一般読者の方には直接関係しないと思うが、このほっとした気持ちを共有していただけるとありがたいと思って筆を執った。ちょっと状況を簡単に説明すると、巻14は全20巻中特異な巻である。登載歌は238首に及ぶが、すべて東国在住者の歌である。東海、関東、北陸、東北を含み、この巻特有の東国訛りがちりばめられている。奈良、京都等の、いわば中央歌とは一風変わっている。方言は当時の資料がないので巻14自体が資料となる。このため、その読解には少なからず難渋した。一例だけ挙げてみよう。3566番歌は次のようになっている。
我妹子に我が恋ひ死なばそわへかも神に負ほせむ心知らずて
興味のある向きは本文によられたいが、本歌は「そわへかも」という用語のために難解歌とされている。事実ある書は「古来難解。後考を待つ。」としている。
私は腕組みして考えた。「そわへかも」を睨んでいる内に「ひょっとしてこれは東国訛りではないか」と思った。そこで、こういう「へ」の使い方をしている例はないかと丹念に調べてみた。その結果こういう「へ」は数例出てきた。私は、この「へ」は「~ない」すなわち「~ず」のことに相違ないと結論づけた。「そわへかも」は「添わずかも」らしいと分かった。私は本文に、次のように記した。
「『彼女に恋い焦がれて死んだなら、彼女と添い遂げることもなく、神(運命)のせいにし、我が心を彼女に知らせないままになる』という歌である」と・・・。
もとより私の読解の適、不適は読者に委ねたいと思う。
ことほどさように、巻14は読解に難渋することが少なくなく、いわば孤独の作業だったわけである。なにごともすんなりとはいかないもんだな、と思い知り、気を引き締めて巻15に取りかかろうと思う。
。 (2016年6月10日)