モモ違い

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　もうそろそろモモの実が大きくなっている頃だろう。そう期待して先日記した場所に寄ってみた。近在の例の手打ちソバ屋だ。むろんそのためだけに出かけたわけではない。目的は二人でソバを食べるためだ。つまり、ソバを食べがてら駐車場に植わわっているモモの木を観察しようというわけだ。
　私の期待はスーパーで売っている、あのどっしりした、ボリュームのある実だ。プロが育てている、スーパーの実とは比べものにならないことは承知していた。が、やや小振りではあっても、あの堂々たる実が枝にぶら下がっている図を想像していた。さぞかし壮観だろうな、というのが私の期待だった。
　現地に到着し、モモの木を前にしたとき、一瞬木を間違えたかな、と思った。頭に描いていたあの、どっしりした壮観な実はどこにもなかった。その代わり、二回りも三回りも小さい、黄色味を帯びた実が、所狭しと枝に付いていた。
　群がって付着している小粒な実。それはまごうかたなくモモの実だった。実際に見た花は確かにモモの花だったし、その際それがモモの木であることを店の人に確認もしている。私はあっけに取られ、しばらく眺めてから、吹き出した。自分で自分の早とちりにあきれ果て、おかしくてたまらなくなったのである。
　誰がスーパーの店頭に並んでいる実と同じ実がなるなどと言ったというのだ。これはモモはモモでもスモモという奴に相違ない。したがって木には何の落ち度も罪もない。早とちりして勝手に思い描いた、この私めの馬鹿さ加減を露呈したに過ぎない。スモモと分かれば立派に実を付け、豊かな生命体を主張しているのである。モモもスモモもモモの内、というからそれに出会えた幸運に感謝すべきに相違ない。見たことのなかったスモモの木と豊かに群がる実に、合掌である。
　　　　　　　　　　　（２０１６年９月７日）