無用の用

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　「何の役に立つ」といったらいいのか「思いもかけぬ効用」といったらいいのか、表現のしようがない。１０月中旬に排水管の取り替え工事があって、その際、小物を一時的に収容すべくスーパーで小さな段ボール箱をもらってきた。用済みになった空の段ボール箱に飼い猫のチビが入り込んだ。このことは「段ボールのチビ」と題して１０月１９日の本欄で取り上げた。１０月１９日の段階では、チビくんのこの行為は一時的なもの、続いても、せいぜい十日もすれば飽きるだろうとみていた。
　以来、二ヶ月ほどが経過した。驚いたことにチビくんはあの窮屈な所に毎日入り込んでじっとしている。毎日？。そう一日も欠かさず毎日である。時間は日によって異なるが、１～４時間に及ぶ。こうなると、「気に入ったから」とか「居心地がいいのだろう」という表現では不十分になる。「チビくん特有の習性」としかいいようがない。
　おかげで、隙あらば狭いところに入ろうとしていたのがなくなってしまった。机の奥の隅っこ、洋ダンスの中、押入の中、本箱の背後等々、ともかく折りあらばと狙った箇所に入らなくなった。このことは、チビの姿を見かけなくなった場合、家中探し回らなくてもよくなったことを意味する。
　こうした経過を考えると、本来無用の存在であった、段ボールの小箱が思いもかけない用途に使われ、役だっていることを知らされる。こんなことなら最初っから段ボール箱を用意すればよさそうに思える。が、むろんそれは結果論である。排水管の取り替え工事でもなければ、誰がチビくんの用途に役立つなんて考えられよう。
　不思議といえば不思議ですね。あるものが、全く思いもかけなかった用途となり、おかげでチビの姿を探し回らなくてもよくなるなんて。「無用も用なり」こんな文句が頭に浮かんできた出来事である。
　　　　　　　　　　　（２０１６年１２月１４日）