スエちゃんの死

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　金魚のスエちゃんが死んだ。一年以上も前の本欄に一文を寄せた金魚だ。金魚三姉妹の末っ子。前回の一文の際、すでにスエちゃんは水面に腹を向けて浮かんでいた。いつ死んでもおかしくない状態だった。
　殺すに忍びなく、さりとてそのまま死を待つ状態を続けさせるのも忍びない。どうしてやることも出来ず、胸の痛い日々が続いた。餌を与えると、反転はできないものの、懸命に背びれを動かし、口をとがらせて何とか餌に食らいつく。いつ死ぬか、いつ死ぬかと、毎朝、注意深く観察する日々。
　が、スエちゃんは驚異的な生命力で生き延び、何と一年半もの長きにわたって、水面に浮かんだまま生き続けた。そのスエちゃんも今朝、水槽の隅っこに沈んで死んでいた。つついても網ですくってもびくともしない。放置すると、二人の姉、アカネちゃんとマナカちゃんにバイ菌が広がって累が及びかねない。私はやむなく泣く思いでスエちゃんを取り除いた。死んだ姿を撮影するに忍びなく、取り除いたまま、瞠目し、手を合わせた。
　スエちゃんは二人の姉とともに、４年以上にもわたって一緒に生活してきた。
　相棒がやってきたので、スエちゃんの死を告げると、彼女も非常に残念がった。時折にしろ、長い長い間、スエちゃんの頑張りを目の当たりにしてきたので、手を合わせてスエちゃんを弔った。
　　ついに時きたれりたかが金魚ぞと言い聞かせつつその死悔しき　　　（桐山芳夫）
　　がんばってがんばってなお生き延びしひとつの金魚この世去りゆく　（桐山芳夫）
　どんなに小さく、どんなにささやかな生命であっても、我が家の中の、同じ空間、同じ年月を懸命に生き抜いてきた生命体。彼方の地に赴いても「幸いあれかし」と祈らずにはいられなかった。
　　　　　　　　　　　（２０１７年３月２７日）