懸命に生きる

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　金魚のスエちゃんの死から三日経った。スエちゃんが夢に出てきて驚いた。４，５年前、多くの金魚が次々に死んだことがある。４，５日の間に４匹も死んだのである。以降、金魚は少数だけ飼育することにし、スエちゃんを含めて３匹だけに限定した。この時、死んだ金魚の夢は見なかった。
　２年前の３匹の写真が残っていて、むろん、スエちゃんも元気に泳いでいた。死んだ４匹の金魚はあっという間に死んでしまったせいか、あまり記憶に残らなかった。写真から半年ほどしてからスエちゃんは仰向けになって水面に浮かぶようになった。こういう状態になったら、先例によれば４，５日の間に息を引き取る筈だった。が、なぜか、スエちゃんは強靱だった。五日経ち、十日経ち、一ヶ月経っても生き続けた。
　どうしていいか分からない私は、水槽の水を一部換えたり、砂を洗ったり、塩をつまんで落としたりした。そうした私の措置が功を奏したか否か分からないが、スエちゃんは強靱な生命力で生きつづけた。毎朝、水面に浮かべた細かい浮上性の餌を懸命にヒレを動かして近寄り、なんとか食べた。他の二匹のアカネちゃんもマナカちゃんも自分の分を食べ終わると、決してスエちゃんの邪魔をするようなことはなかった。
　そういう状態で、スエちゃんは懸命に生き続け、一ヶ月、三ヶ月、そしてついに半年も生き続けたのである。しかも、半年過ぎてもなお生き続け、とうとう、一年半にも渡って生き続けた。懸命になって全身のヒレを動かし、餌に近づくその様子。この私自身をも勇気づけるのに十分だった。
　　　ささやかに金魚懸命生き伸びてなお生き延びて息引き取りぬ　（桐山芳夫）
　そのスエちゃんが死んで三日。餌にありつくため、全身のヒレを懸命に動かした、あのスエちゃんが、夢に出てきて当然かも知れない。
　　　　　　　　　　　（２０１７年３月３０日）