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手間取る

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 万葉集の読解も4024番歌まで終えた。後92首で、ひと区切りがつく。私が読解を開始したのは2013年1月。現在5年目に入っている。意外に手間取どっている。漢字ばかりの原文を含め、万葉集全体に目を配りながらの作業でやむを得ないかも知れない。
 万葉集は奈良時代以前の古代人の心情。この意味では世界に冠たる世界遺産。世界中の人々が理解出来るようにするには、まず、私たち日本人自身が理解出来なければならない。翻訳すればそのまま読める代物にしたい。こういう思いで作業を続けている。
 が、手間取っている一端は歌意の取り方にもある。たとえば、今回終えた4413番歌。
 訓読=枕太刀腰に取り佩きま愛しき背ろがめきこむつくの知らなく
  原文=麻久良多之 己志尓等里波伎 麻可奈之伎 西呂我馬伎己無 都久乃之良奈久
 大阪の難波に集結して、九州に向かう防人(さきもり)の妻の歌である。
 太刀を腰に帯びて夫が難波に向かう、いわば門出の歌である。「めきこむ」をある書は「罷(ま)き来む」と読んで「任終えて帰って来る」と解釈する。が原文は「馬伎己無」で「めきこむ」としか読めない。「ま」は、「枕」や「ま愛(かな)し」のように、いずれも「麻」の字が使われている。ある書は原文どおり「めきこむ」と読んでいるが、結果的には「任終えて帰って来る」と解釈している。最大の難点は原文の「都久」を「月」と読んでいることだ。「都久」は「つく」で「月」とは読みづらい。事実「月」は万葉集に多く出てくるが、ほとんど「月」と書いている。詳細は本文によられたいが、これでは歌意が通りにくく、私はさんざん悩み、「つく」は「着く」と気づいた。帰任するのに最低3年先になる防人の門出に「帰る月がいつか分からない」と言って送り出す筈はない。逆に「無事に旅して下さい」という意味だと気づいた。こんなわけで、専門書の解釈もそのまま信じづらく、手間取る場合があるのである。
           (2017年4月3日)
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