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万葉集読解・・・162(2539~2560番歌)

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     万葉集読解・・・162(2539~2560番歌)
2539  相見ては千年や去ぬる否をかも我れやしか思ふ君待ちかてに
      (相見者 千歳八去流 否乎鴨 我哉然念 待公難尓)
 「千年やいぬる」は「千年も経ってしまったのだろうか」という、「否(いな)をかも」は「いや、そうではないのかな」という意味である。本歌は3470番歌に重出。
 「お逢いしてからもう千年も経ってしまったのでしょうか。いや、そうではないのかな。私だけがそう思っているだけなのかな。あなたを待ちかねて」という歌である。

2540  振分けの髪を短み青草を髪にたくらむ妹をしぞ思ふ
      (振別之 髪乎短弥 青草乎 髪尓多久濫 妹乎師僧於母布)
 「髪を短み」は「~ので」の「み」。まだ一人前になっていない少女。「たくらむ」は
つける」という意味。「妹をし」は強意の「し」。
 「振り分けの髪がまだ短いので青草を髪につけている、まだ少女少女したあの子を思う」という歌である。

2541  た廻り行箕の里に妹を置きて心空にあり地は踏めども
      (徊俳 徃箕之里尓 妹乎置而 心空在 土者踏鞆)
 「た廻(もとほ)り」は枕詞(?)。「めぐって」で通じる。「行箕(ゆきみ)の里」は所在不詳。
 「わざわざ回り道をして行箕(ゆきみ)の里に彼女を置いて旅に出たが、彼女のことが心配で心ここにあらず、土は踏んでいるけれど」という歌である。

2542  若草の新手枕をまきそめて夜をや隔てむ憎くあらなくに
      (若草乃 新手枕乎 巻始而 夜哉将間 二八十一不在國)
 「まきそめて」は「共寝しはじめて」という、「隔てむ」は「逢わないで」という意味。
 「若草のような新妻の手枕を巻いて(共寝した)彼女に幾夜も逢わずにいられようか。可愛くて仕方ないのに」という歌である。

2543  我が恋ふることも語らひ慰めむ君が使を待ちやかねてむ
      (吾戀之 事毛語 名草目六 君之使乎 待八金手六)
 「君が使を待ちやかねてむ」は「その使いも待ちくたびれて」という意味である。
 「こんなに恋い焦がれていることを、あなたの使いにいっそ話して慰めにしようかしらと思うのに、その使いさえなかなか来ず、もう待ちくたびれました」という歌である。

2544  うつつには逢ふよしもなし夢にだに間なく見え君恋ひに死ぬべし
      (<寤>者 相縁毛無 夢谷 間無見君 戀尓可死)
 「うつつには」は「現実には」という、「逢ふよしもなし」は「逢う機会がありません」という意味。「夢にだに間なく見え」は「夢にしょっちゅう出てきて下さい」という意味。
 「現実には逢う機会がありません。せめて夢にしょっちゅう出てきて下さいあなた。もう恋しくて死んでしまいそうです」という歌である。

2545  誰ぞかれと問はば答へむすべをなみ君が使を帰しやりつも
      (誰彼登 問者将答 為便乎無 君之使乎 還鶴鴨)
 「答へむすべをなみ」は「答えようがなく」という意味。「~ので」の「み」。
 「誰よその人はと問われたら、答えようがないので、あなたからの使いを帰してしまいました」という歌である。

2546  思はぬに至らば妹が嬉しみと笑まむ眉引き思ほゆるかも
      (不念丹 到者妹之 歡三跡 咲牟眉曵 所思鴨)
 「思はぬに至らば」は「突然に訪ねたら」という、「嬉しみと」は「嬉しそうに」という意味である。
 「突然に訪ねたら、彼女が嬉しそうに笑ってあわてて眉を引く姿が思い浮かぶ」という歌である。

2547  かくばかり恋ひむものぞと思はねば妹が手本をまかぬ夜もありき
      (如是許 将戀物衣常 不念者 妹之手本乎 不纒夜裳有寸)
 「離れてみて」を補って読むと分かりやすい。旅の途上の歌か。
 「離れてみてこんなに恋しい彼女と思わなかった。一緒に居るときは枕を共にしない夜もあったのに」という歌である。

2548  かくだにも我れは恋ひなむ玉梓の君が使を待ちやかねてむ
      (如是谷裳 吾者戀南 玉梓之 君之使乎 待也金手武)
 「玉梓(たまづさ)の君が使を」は「たまづさの枝にはさんだあなたの手紙をもった使い」という意味である。
 「こんなにも私は恋い焦がれているのだろうか。あなたからの手紙を持った使いさえ今か今かと待ちかねているのですもの」という歌である。

2549  妹に恋ひ我が泣く涙敷栲の木枕通り袖さへ濡れぬ [或本歌曰 枕通りてまけば寒しも]
      (妹戀 吾哭涕 敷妙 木枕通而 袖副所沾 [或本歌<曰> 枕通而 巻者寒母])
 「敷栲の」は枕詞。平明歌。
 「彼女が恋しくて流す涙は木枕を通り、袖さえ濡れてしまいました」という歌である。 異伝歌は袖ではなく「直接枕を通して寒々としみる」となっている。

2550  立ちて思ひ居てもぞ思ふ紅の赤裳裾引き去にし姿を
      (立念 居毛曽念 紅之 赤裳下引 去之儀乎)
 読解不要の平明歌。
 「居ても立ってもいられない。紅の裳裾を引いて立ち去っていったあの子の姿を思うと」という歌である。

2551  思ひにしあまりにしかばすべをなみ出でてぞ行きしその門を見に
      (念之 餘者 為便無三 出曽行 其門乎見尓)
 「思ひにしあまりにしかば」は「思いに耐えかねて」という意味。「すべをなみ」は「~なので」の「み」、「どうしようもなく」という意味である。
 「あの子を思う思いに耐えかねてどうしようもなく、家から出て行ってあの子の家の門を見にでかけた」という歌である。

2552  心には千重しくしくに思へども使を遣らむすべの知らなく
      (情者 千遍敷及 雖念 使乎将遣 為便之不知久)
 「千重しくしくに」は2234番歌に「一日には千重しくしくに我が恋ふる妹があたりにしぐれ降れ見む」とある。「幾度も幾度もしきりに」という意味である。「使を遣らむすべの知らなく」は高級官吏ではないのでという意味か?。
 「心には幾度も幾度もしきりに思い焦がれているのだけれど、使いの文の出し方も分からない私です」という歌である。

2553  夢のみに見てすらここだ恋ふる我はうつつに見てばましていかにあらむ
      (夢耳 見尚幾許 戀吾者 <寤>見者 益而如何有)
 「ここだ」は「こんなにも」、「うつつに」は「現実に」という意味。
 「夢の中で逢ってすらこんなにもあの子に恋い焦がれるのに、まして現実に逢えばいかばかりだろう」という歌である。

2554  相見ては面隠さゆるものからに継ぎて見まくの欲しき君かも
      (對面者 面隠流 物柄尓 継而見巻能 欲公毳)
 「面隠(かく)さゆる」は「面を隠したくなる」という意味である。
 「面と向かうと恥ずかしさに面を隠したくなるのに、一方ではずっと見たくてたまらないあなたですこと」という歌である。

2555  朝戸を早くな開けそあぢさはふ目が欲る君が今夜来ませる
      (旦戸乎 速莫開 味澤相 目之乏流君 今夜来座有)
 「朝戸を早くな開けそ」は「な~そ」の禁止形。「朝戸を早く開けないで」という意味。「二人っきりでいたいから」という含意。「あぢさはふ」は枕詞。
 「朝早く戸を開けないで、逢いたくてたまらないあの方が今夜にもいらっしゃるから」という歌である。

2556  玉垂の小簾の垂簾を行きかちに寝は寝さずとも君は通はせ
      (玉垂之 小簀之垂簾乎 徃褐 寐者不眠友 君者通速為)
 「玉垂の」は枕詞(?)。「玉を垂らした」で十分通ずる。「小簾(をす)の垂簾(たれす)を」はそのまま「垂簾を」という意味。「行きかちに」は「通りすがりに」という意味である。作者は上流階級の女性か。
 「玉を垂らした垂簾を通りすがりに押しのけて共寝するわけには参りませんが、あなた様通ってきて下さいな」という歌である。

2557  たらちねの母に申さば君も我れも逢ふとはなしに年ぞ経ぬべき
      (垂乳根乃 母白者 公毛余毛 相鳥羽梨丹 年可經)
 「たらちねの」はお馴染みの枕詞。しばし秘密裏にお逢いしましょう」という歌。
 「母に申したらあなたと逢うこともなしに年は過ぎていく」という歌である。

2558  愛しと思へりけらしな忘れと結びし紐の解くらく思へば
      (愛等 思篇来師 莫忘登 結之紐乃 解樂念者)
 「愛(うつく)しと思へりけらし」でいったん切る。「な忘れと」は「忘れるなよ」という意味。
「忘れるなよと仰ったので、私のことを愛(いと)しいと思って下さっているらしい。結んだ紐が自然にほどけてしまうのを思うと」という歌である。

2559   昨日見て今日こそ隔て我妹子がここだく継ぎて見まくし欲しも
      (昨日見而 今日社間 吾妹兒之 幾<許>継手 見巻欲毛)
 「ここだく」は「非常に」ないし「しきりに」という意味。
 「継ぎて見まくし」は「続けて逢いたい」という意味である。「昨日逢って今日離れているだけなのにその彼女に続けて逢いたいとしきりに思う」という歌である。

2560  人もなき古りにし郷にある人をめぐくや君が恋に死なする
      (人毛無 古郷尓 有人乎 愍久也君之 戀尓令死)
 「古りにし」は「ひっそりした」という意味。「めぐくや」は「かわいそうに」という意味である。
 「人のいないひっそりした郷にあるこの私を、かわいそうにもあなたが恋死にさせるおつもりですか」という歌である。
           (2015年5月22日記、2018年11月15日)
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