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万葉集読解・・・180(2923~2944番歌)

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     万葉集読解・・・180(2923~2944番歌)
2923  ただ今日も君には逢はめど人言を繁み逢はずて恋ひわたるかも
      (直今日毛 君尓波相目跡 人言乎 繁不相而 戀度鴨)
 「ただ今日も」は原文「直今日毛」から分かるように「今日すぐにでも」という意味。「逢はめど」は「逢いたいのですが」という意味である。「人言を繁み」は「~ので」の「み」。
 「今日すぐにでもあなたにお逢いしたいのですが、ひとの口がうるさいのでお逢いしないまま恋続けていました」という歌である。

2924  世の中に恋繁けむと思はねば君が手本をまかぬ夜もありき
      (世間尓 戀将繁跡 不念者 君之手本乎 不枕夜毛有寸)
 「恋繁けむと」は「恋というものがこんなに激しいものだとは」という意味である。「手本をまかぬ」は「共寝をしない」ということ。
 「世の中に恋というものがこんなに激しいものだとは思わなかったので、あなたと共寝をしない夜もあった」という歌である。

2925  みどり子のためこそ乳母は求むと言へ乳飲めや君が乳母求むらむ
      (緑兒之 為社乳母者 求云 乳飲哉君之 於毛求覧)
 「みどり子」は「赤子」のこと。
 「赤ちゃんのためにこそおっぱいを求めるというのでしょ。乳でも飲むんですか。あなたがおっぱいを求めるのは」という歌である。

2926  悔しくも老いにけるかも我が背子が求むる乳母に行かましものを
      (悔毛 老尓来鴨 我背子之 求流乳母尓 行益物乎)
 文字通り「乳母(めのと)として参上する」という意味。が、「我が背子が」とあるので相手は成人男性。前歌と関連づけて解すれば、恋の拒絶歌。
 「悔しいけれど老いてしまいましたわ。若ければ、あなたが求めるおっぱいをあげに行きたいのですが」という歌である。

2927  うらぶれて離れにし袖をまたまかば過ぎにし恋い乱れ来むかも
      (浦觸而 可例西袖(口+リ) 又巻者 過西戀以 乱今可聞)
 「うらぶれて」は「心がしぼんで」という意味。「またまかば」は「また共寝したら」という意味である。「過ぎにし恋い」の「い」は強調。
 「心がしぼんで離れてしまったあの子の袖それをまた巻いて共寝をしたならば、過ぎ去ってしまった恋、その恋が再び乱れ来るかも」という歌である。

2928  おのがじし人死にすらし妹に恋ひ日に異に痩せぬ人に知らえず
      (各寺師 人死為良思 妹尓戀 日異羸沼 人丹不所知)
 「おのがじし」は「それぞれに」という意味。「日(ひ)に異(け)に」は「日増しに」という意味。「人に知らえず」は「彼女に知られないまま」という意味である。
 「人はそれぞれのあり方で死ぬもののようだ。(私の場合は)彼女に恋い焦がれ日増しにやせ衰えて(死ぬかも知れない。)彼女に知られることもなく」という歌である。

2929  宵々に我が立ち待つにけだしくも君来まさずは苦しかるべし
      (夕々 吾立待尓 若雲 君不来益者 應辛苦)
 「けだしくも」は「もしかして」という意味。平明歌。
 「毎夜毎夜戸口に立っておいでになるのをお待ちしています。が、ひょっとしてあなたがおいでにならなければさぞかし苦しいでしょうね」という歌である。

2930  生ける世に恋といふものを相見ねば恋のうちにも我れぞ苦しき
      (生代尓 戀云物乎 相不見者 戀中尓毛 吾曽苦寸)
 「生ける世に」は「生まれてこの方」という意味。「相見ねば」は「出合ったことがない」という意味。
 「生まれてこの方恋というものに出合ったことがない。が、実際に恋の最中にいると、とても苦しくてたまらない」という歌である。

2931  思ひつつ居れば苦しもぬばたまの夜に至らば我れこそ行かめ
      (念管 座者苦毛 夜干玉之 夜尓至者 吾社湯龜)
 「思ひつつ居れば」は「あなたを思ってじっと待っていると」という意味である。「ぬばたまの」はおなじみの枕詞。万葉の時代であっても、この歌のように女性の方から訪ねるという例があったことをうかがわせる。
 「あなたを思ってじっと待っていると苦しくてなりません。夜になったらこちらからうかがおうかしら」という歌である。

2932  心には燃えて思へどうつせみの人目を繁み妹に逢はぬかも
      (情庭 燎而念杼 虚蝉之 人目乎繁 妹尓不相鴨)
 「うつせみの」は「現実には」という意味。「人目を繁み」は「~ので」の「み」。
 「心の中では彼女に燃えたぎっているけれど、現実には人の目がうるさいので彼女になかなか逢えない」という歌である。

2933  相思はず君はいませど片恋に我れはぞ恋ふる君が姿に
      (不相念 公者雖座 肩戀丹 吾者衣戀 君之光儀)
 「相思はず」は「互いに思わない」すなわち「私のことなど思わない」という意味。「いませど」は「いらっしゃらない」という敬語。
 「私のことなど思って下さらないでしょうが、私の方はあなたのお姿に恋い焦がれています」という歌である。

2934  あぢさはふ目は飽かざらねたづさはり言とはなくも苦しくありけり
      (味澤相 目者非不飽 携 不問事毛 苦勞有来)
 「あぢさはふ」は5例あるが、短歌は本歌のほかに2555番歌一例。枕詞(?)。難解な用語。本歌も歌意難解。「目は飽かざらね」は「目にはしばしば見かけるが」という意味か。「たづさはり」は「相携わり」と「相」を補って解する。
 「いつもお見かけしていますが、近くに寄ってお話できないのは苦しゅうございます」という歌である。

2935  あらたまの年の緒長くいつまでか我が恋ひ居らむ命知らずて
      (璞之 年緒永 何時左右鹿 我戀将居 壽不知而)
 「あらたまの」は枕詞。「命知らずて」は「いつまで生きているかわかりもしないのに」という意味である。
 「長い年月、いつまで恋い焦がれているというのか、いつまで生きているかわかりもしないのに」という歌である。

2936  今は我は死なむよ我が背恋すれば一夜一日も安けくもなし
      (今者吾者 指南与我兄 戀為者 一夜一日毛 安毛無)
 平明歌。
 「もう今私は死にそうです。私のあなた、あなたに恋い焦がれていると、一晩も一日も気が休まる時がありません」という歌である。

2937  白栲の袖折り返し恋ふればか妹が姿の夢にし見ゆる
      (白細布之 袖折反 戀者香 妹之容儀乃 夢二四三湯流)
 「白栲(しろたへ)の」は「白い布の」ないし袖の美称。「袖折り返し」は折り返して寝ると恋人が夢に出てくると信じられていた。2812番歌に「~白栲の袖返ししは夢に見えきや」と詠われている。
 「白栲の袖を折り返して恋い焦がれ寝たせいか彼女の姿が夢に出てきた」という歌である。

2938  人言を繁み言痛み我が背子を目には見れども逢ふよしもなし
      (人言乎 繁三毛人髪三 我兄子乎 目者雖見 相因毛無)
 「人言(ひとこと)を繁(しげ)み」は「~ので」の「み」。「人の口が激しいので」という意味。「言痛(こちた)み」も「~ので」の「み」。「人の口が激しくうるさいので」という意味である。「逢ふよしもなし}は「逢うてだてがない」という意味。
 「人の口が激しくうるさいので、あの方を見かけることは出来ても直接逢うてだてがない」という歌である。

2939  恋と言へば薄きことなりしかれども我れは忘れじ恋ひは死ぬとも
      (戀云者 薄事有 雖然 我者不忘 戀者死十万)
 「薄きことなり」は、「薄っぺら」、「通り一遍」ないし「なんでもない」という意味。
 「恋といえばなんでもないことのように思える。けれども、私は忘れはしない。恋い焦がれて死ぬことになっても」という歌である。

2940  なかなかに死なば安けむ出づる日の入る別知らぬ我れし苦しも
      (中々二 死者安六 出日之 入別不知 吾四九流四毛)
 「なかなかに」は「いっそのこと」という意味。「出づる日の入る別」は「太陽がいつ出てきていつ沈むのか分からない」という意味である。
 「いっそのこと死んでしまえば安らかになるだろう。太陽がいつ出てきていつ沈むのか分からない私、苦しくてたまらない」という歌である。

2941  思ひ遣るたどきも我れは今はなし妹に逢はずて年の経ぬれば
      (念八流 跡状毛我者 今者無 妹二不相而 年之經行者)
 「思ひ遣る」は「この思いを放つ」すなわち「思いを晴らす」という意味。「たどき」は「方法」ないし「手段」。
 「この思いを晴らす手だては今の私にはない。彼女に逢えないまま年月が経ってしまったので」という歌である。

2942  我が背子に恋ふとにしあらしみどり子の夜泣きをしつつ寐ねかてなくは
      (吾兄子尓 戀跡二四有四 小兒之 夜哭乎為乍 宿不勝苦者)
 上二句と下三句は倒置表現。「恋ふとにしあらし」は「恋い焦がれているらしい」という意味である。「寐(い)ねかてなくは」は「寝られないのは」という意味。
 「あの人に私は恋い焦がれているらしい。まるで赤子のように夜泣きして寝られないのは」という歌である。

2943  我が命の長く欲しけく偽りをよくする人を捕ふばかりを
      (我命之 長欲家口 偽乎 好為人乎 執許乎)
 「長く欲しけく」は「長くあって欲しい」という意味。「偽りをよくする人を」だが、「たびたび嘘をつく人」なら「いつだってとらえてとっちめればよさそう」である。ここは体よく遊ばれてしまった女の執念を感じる。
 「私の命は長くあって欲しい。巧みに嘘をついてだましたあの男をいつかとっつかまえてとっちめるために」という歌である。

2944  人言を繁みと妹に逢はずして心のうちに恋ふるこのころ
      (人言 繁跡妹 不相 情裏 戀比日)
 「人言を繁み」は2938番歌に出てきたばかり。「人の口が激しいので」という意味。
 「人の口が激しいので彼女には逢わないようにし、心の中で恋い焦がれているばかりのこのごろです」という歌である。
           (2015年10月14日記、2019年3月15日)
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