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万葉集読解・・・193(3175~3193番歌)

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     万葉集読解・・・193(3175~3193番歌)
3175  和歌の浦に袖さへ濡れて忘れ貝拾へど妹は忘らえなくに [或本歌末句云「忘れかねつも」]
      (若乃浦尓 袖左倍<沾>而 忘貝 拾杼妹者 不所忘尓)或本歌末句云(忘可祢都母)
 和歌の浦は和歌山県和歌山市和歌浦。
 「和歌の浦で袖さへ濡らして恋忘れ貝を拾ったけれど、あの子を忘れられない」という歌である。
 ある本の結句に「忘れかねる」という注が付けられている。

3176  草枕旅にし居れば刈り薦の乱れて妹に恋ひぬ日はなし
      (草枕 羈西居者 苅薦之 擾妹尓 不戀日者無)
 「草枕」は旅の枕詞。薦(こも)はむしろの材料にするマコモのこと。
 「旅にあって寝床にしようと刈り取った薦が乱れるように、私の心は乱れて彼女を恋しく思わない日はない」という歌である。

3177  志賀の海人の礒に刈り干すなのりその名は告りてしを何か逢ひかたき
      (然海部之 礒尓苅干 名告藻之 名者告手師乎 如何相難寸)
 志賀(しか)は福岡県の志賀島。「なのりそ」はホンダワラの古名で広辞苑に「海産の褐藻」とある。「な告(の)りそ」は「な~そ」という禁止形に見立てて使ったもので、「名を告げてはいけません」という意味。とおりすがりの男に名を告げてはいけないと忠告している。
 「志賀の海人(あま)が刈り取ったなのりそを磯に干して、にもかかわらず、あえて名を告げたのに、どうしてなかなか逢えないのでしょう」という歌である。

3178  国遠み思ひなわびそ風のむた雲の行くごと言は通はむ
      (國遠見 念勿和備曽 風之共 雲之行如 言者将通)
 「国遠み」は「~ので」の「み」。「国が遠いからといって」という意味。「なわびそ」は「な~そ」の禁止形。「わびしがらないで」という意味。「風のむた」は「風と共に」という意味。「言(こと)は通はむ」は「(互いの)消息は分かるでしょうから」という意味である。旅の空にいる夫に呼びかけた妻の歌。
 「国が遠いからといってわびしがらないで。風と共に雲が流れゆくごとく、(互いの)消息は自然に流れつくでしょうから」という歌である。

3179  留まりにし人を思ふに秋津野に居る白雲のやむ時もなし
      (留西 人乎念尓 蜒野 居白雲 止時無)
 「留まりにし人を」は「留(とど)まりし人を」という意味。「家に残った人」つまり妻のこと。秋津野(あきづの)は地名。奈良県吉野郡吉野町宮滝付近の野。3065番歌に「み吉野の蜻蛉の小野に~」とある。
 「家に留まっている妻のことを思うと、その思いは秋津野(あきづの)にかかる白雲のように止むときがない」という歌である。

3180  うらもなく去にし君ゆゑ朝な朝なもとなぞ恋ふる逢ふとはなけど
      (浦毛無 去之君故 朝旦 本名焉戀 相跡者無杼)
 本歌から悲別歌(別れを悲しむ歌)。3180~3210番歌の31首。
 「うらもなく去(い)にし」は「思いもかけずあっさり旅だっていった」という意味である。「うら」は心である。「もとなぞ」は「しきりに」という意味である。
 「思いもかけずあっさり旅だっていったあなたですもの。毎朝、毎朝しきりに恋しくてなりません。逢えるわけではありませんが」という歌である。

3181  白栲の君が下紐我れさへに今日結びてな逢はむ日のため
      (白細之 君之下紐 吾左倍尓 今日結而名 将相日之為)
 「白栲(しろたへ)の」は「真っ白な」という意味。「我れさへに」は「私も手を添えて」という意味である。
 「白栲のあなたの下紐は今日は私も共に結びましょう。あなたに逢える日がくるまで」という歌である。

3182  白栲の袖の別れは惜しけども思ひ乱れて許しつるかも
      (白妙之 袖之別者 雖惜 思乱而 赦鶴鴨)
 「白栲(しろたへ)の」は前歌参照。結句の「許しつるかも」は「別れることを許してしまった」という意味である。
 「袖と袖をからませた仲であったあなたとの別れは惜しいけれど、悲しさに心が乱れている最中に別れることを許してしまった」という歌である。

3183  都辺に君は去にしを誰が解けか我が紐の緒の結ふ手たゆきも
      (京師邊 君者去之乎 孰解可 言紐緒乃 結手懈毛)
 「誰(た)が解(と)けか」は「誰が解こうとするのでしょう」という意味である。結句の「結(ゆ)ふ手たゆきも」の「たゆき」は全万葉集歌中本歌一例しかない。歌意から考えて「もどかしい」という意味。
 「あなたは都に行ってしまったというのに、誰が解こうとするのでしょう我が紐の緒を。紐の緒を結ぶのがもどかしい」という歌である。

3184  草枕旅行く君を人目多み袖振らずしてあまた悔しも
      (草枕 <客>去君乎 人目多 袖不振為而 安萬田悔毛)
 「草枕」は旅の枕詞。「人目多み」は「~ので」の「み」。「あまた」は数が多いことだが、ここでは「しきりに」という意味。
 「草を枕の旅に出て行くあなたを人目が多いので袖を振らずじまいでした。しきりに後悔される」という歌である。

3185  まそ鏡手に取り持ちて見れど飽かぬ君に後れて生けりともなし
      (白銅鏡 手二取持而 見常不足 君尓所贈而 生跡文無)
 「まそ鏡」は枕詞。「君に後れて」は「あなたに置き去りにされて」という意味。
 「まそ鏡を手に取り持って見るように、幾度見ても見飽きぬあなたに置き去りにされて生きた心地がしません」という歌である。

3186  曇り夜のたどきも知らぬ山越えています君をばいつとか待たむ
      (陰夜之 田時毛不知 山越而 徃座君者 何時将待)
  「たどき」はとっかかりや手段のこと。ここでは全く様子が分からないことを言っている。
 「曇った真っ暗な夜、全く様子が分からない山を越えていらっしゃるだろうあなた様を、いつになったらいらっしゃるだろうかとお待ちしています」という歌である。

3187  たたなづく青垣山の隔なりなばしばしば君を言問はじかも
      (立名付 青垣山之 隔者 數君乎 言不問可聞)
 「たたなづく」は短歌1例、長歌2例の3例のみ。194番長歌の「~嬬の命のたたなづく柔肌すらを~」と、923番長歌の「~吉野の宮はたたなづく青垣隠り~」があるのみである。例が少なく、「重なり合う」という意味である。「隔(へ)なりなば」は「隔てられてしまったら」という意味。「言問はじかも」は「便りをさしあげることもできませんね」という意味である。
 「重なり合う青い山々に隔てられてしまったら、しばしばあなたに便りをさしあげることもできませんね」という歌である。

3188  朝霞たなびく山を越えて去なば我れは恋ひむな逢はむ日までに
      (朝霞 蒙山乎 越而去者 吾波将戀奈 至于相日)
 「恋ひむな」は「恋い焦がれるでしょう」という意味。「逢はむ日までに」は「お逢いできる日が来る日までずっと」という意味である。
 「朝霞がたなびく山を越えて行ってしまったら、私は恋い焦がれるでしょう。お逢いできる日が来る日までずっと」という歌である。

3189  あしひきの山は百重に隠すとも妹は忘れじ直に逢ふまでに [一云 隠せども君を思はくやむ時もなし]
      (足桧乃 山者百重 雖隠 妹者不忘 直相左右二 [一云 雖隠 君乎思苦 止時毛無])
 「あしひきの」はおなじみの枕詞。「山は百重(ももへ)に隠すとも」は「幾重にも重なった山が彼女を隠そうと」という意味である。
 「幾重にも重なった山が彼女を隠そうと彼女のことはわすれない、直接逢える日が来るまで」という歌である。
 或本には「~隠そうとあなたを思う気持ちは止むときがありません」とあり、女性歌となっている。

3190  雲居なる海山越えてい行きなば我れは恋ひむな後は逢ひぬとも
      (雲居<有> 海山超而 伊徃名者 吾者将戀名 後者相宿友)
 「雲居なる」は「あの彼方にかかっている雲」という意味。「い行きなば」の強意の「い」。 「あの彼方にかかっている雲の下の海や山を越えて行ってしまわれたら、私は恋しくてたまらないでしょう。たとえ後には逢えるとしても」という歌である。

3191  よしゑやし恋ひじとすれど木綿間山越えにし君が思ほゆらくに
      (不欲恵八<師> 不戀登為杼 木綿間山 越去之公之 所念良國)
 「よしゑやし」は「たとえ~とも」という意味。木綿間山(ゆふまやま)は所在不詳。「思ほゆらくに」は「思われてなりません」という意味である。
 「たとえもうあなたのことは思うまいとするものの、木綿間山(ゆふまやま)を越えて行ってしまったあなたのことはやはり思われてなりません」という歌である。

3192  草蔭の荒藺の崎の笠島を見つつか君が山道越ゆらむ [一云 み坂越ゆらむ]
      (草蔭之 荒藺之埼乃 笠嶋乎 見乍可君之 山道超良無 [一云 三坂越良牟])
 「草蔭の」は枕詞(?)。もう一例3447番歌に「草蔭の安努な行かむと墾りし道安努は行かずて荒草立ちぬ」とある。「荒れた草陰」という意味か。「荒藺(あらゐ)の崎の笠島」は所在不詳。
 「草陰が荒れている荒藺(あらゐ)の崎の笠島を眺めつつ今頃あなたは山道を越えておられるだろうか」という歌である。
 或本には「~坂を越えておられるだろうか」とある。

3193  玉かつま島熊山の夕暮れにひとりか君が山道越ゆらむ [一云 夕霧に長恋しつつ寐ねかてぬかも]
      (玉勝間 嶋熊山之 夕晩 獨可君之 山道将越 [一云 暮霧尓 長戀為乍 寐不勝可母])
 「玉かつま」は3例しかなく、かつ、同じ言葉にかかる例はない。枕詞(?)。島熊山(しまくまやま)は所在未詳。
 「夕暮れの島熊山(しまくまやま)をあなたはおひとりで山道を越えておられるだろうか」という歌である。
 異伝歌は「~夕霧の中で長らく恋い焦がれ眠ることができない」となっている。
           (2016年1月7日記、2019年3月19日)
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