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二十年後

日々つれづれ-11トップへ
 前々回、英会話クラブ例会で、オーヘンリーの代表的な短編「賢者の贈り物」をやさしくリライトしたと見られるテキストが配布されたことを記した。昨日の例会でその続文が配布された。内容はすでに記したので、ここでは今読んだばかりの「二十年後」(After Twenty Years)について寸感を述べよう。オーヘンリー作品は人生の悲哀と人間味にあふれている。二十年ぶりに約束した場所と日時に再会する無二の親友の物語である。
 物語は一人の警官が夜のニューヨークを巡回する所から始まる。通常、警官というと規則がらめの融通の利かない、ないしは いかめしい存在として登場する。子供のしつけに「悪い事するとお巡りさんにいいつけるからね」と使われる存在である。ところが、オーヘンリーの描く警官はどこかユーモラスで人情味があるのだ。訳文だとニュアンスが出にくいので、描写のさわりの部分をほんの半行だけ抜き出してみる。
   twirling his club with many intricate and artful movements
 clubは警棒だが、問題はintricate and artfulである。どこかユーモラスで得意げな警官の様子が目に浮かぶではないか。
 さて、無二の親友とは、一人は現在シカゴのお尋ね者、もう一人は冒頭に登場する警官である。警官は相手がシカゴのお尋ね者だと気づくが、素知らぬそぶりで身なりを整え、ぴったりの時刻に二十年ぶりの約束を果たす。警官は「自分で手錠をかけるに忍びず、後は別の警官に委ねる」という短い手紙を置いて立ち去るという物語である。自ら逮捕されたことがある作者でありながら警官に注がれるまなざしは温かい。
 私がオーヘンリー作品に接したのは半世紀ぶりだが、人を見るまなざしの暖かさをあらためて教わった気がするのである。
            (2015年2月15日)
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