時代遅れ型

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　最近、私は「時代遅れ人間」と罵声を浴びせられることが少なくない。むろん、相手は揶揄ではなく軽口で発する言葉なので腹は立たない。が、腹が立たないのは「時代遅れ人間」なる評に心当たりがあるせいもある。私はあまり流行を追わない性分なので、ときの話題にうとい方である。ただ、ざっととはいえ、テレビや新聞報道などには気を配っているのでビッグニュース類は一通り頭に入っている。
　私が弱いのは最近の文化動向である。服飾、グルメ、お洒落関係その他である。特に弱いのは芸能関係。中でもミュージシャン関係。どんな歌手やグループがどんな歌を唄い、どんな踊りを披露しているのか見当もつかない。私の相棒のように、彼らの男女関係や親子関係まで知っていると聞くと、感嘆を通り越して驚き以外の何ものでもない。そうした話題についていけないこと、それが時代遅れというのなら是非もない。
　が、不思議なことに、私自身はそういう自分が時代遅れと感じたことはない。むしろ私は若い頃から自分は新しがり屋で進歩的だと思って生きてきた。コンピューター関係の職場に喜んで身を投じたし、技術革新だのイノベーションなどの話題には並々ならぬ関心を抱いて生きてきた。芸能、服飾、グルメ、お洒落関係等々に強いのが時流人間ということなら、私などは全くの時代遅れ人間ということになる。時流に乗って生きる人にはそれなりに感心はするけれど、さりとて時流人間族を羨ましいと思ったことはない。「時代遅れ人間」、それはそれで軽口に過ぎないので腹は立たないけれど、真剣になって言いつのったり、いがみ合ったりすることではあるまい。時代遅れ、大いに結構じゃないの。そうとでも開き直らないと、誰に褒められるわけでもない地味な作業なんて続けられるわけがない。コツコツ、ただ、コツコツと一文一文を綴り続ける、あるいは途方もない先のゴールを夢見て一首一首万葉歌に挑むなんてやってられないですもんね。
　　　　　　　　　　　　（２０１５年２月１７日）