春の息吹

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　私はこの時期になると、春がほしくなる。私がいう春とは白梅のことだが、その開花に出会うと、「ああ、春が近いのだな」とほっとした気分になる。咲いた白梅自体は３月に入れば、岐阜市の梅林公園その他に出かければ見事な姿に接することが出来る。なので、咲いているかいないか分からないこの時期にわざわざ探し回ることはしない。普段の行動範囲の中で出会えればめっけものという思いである。
　月に一度通院している耳鼻咽喉科も普段の行動範囲の一つだ。二月の場合、今年は２０日に出かけた。その目的は、むろん診察にあるのだが、実は、医院の前の空き地に植わわっている白梅にお目にかかるのも密かな楽しみなのである。結果は一輪も開花していなくて、がっかりした。開花していれば「春の兆し」として一文を弄するつもりだったが、一文は見送った。
　「春近し」、「春の兆し」、「春めく」といったタイトルならいいが、「春遠し」では様にならない。今年は２０日頃まで寒気が厳しく、首をすくめて春を待つしかないのかな、と覚悟を決めた。
　が、一昨日のことである。私は出会ったのである。それも春の到来本格化とみまごうばかりに見事に開花した白梅を・・・。場所は近在の梅林。私は車を駐め、道路の反対側に足を運んでカメラを構えた。待ちに待った白梅である。小さな喜びだが、私のなかに春が芽を出し、体全体に広がった。
　　　　春の梅やきもきしつつ待つ日々に思わぬ場所で花開きおり
　　　　繰り返す四季のうつろいいつ見てもなお新鮮な心地するなり
　毎年毎年繰り返される春の息吹、見飽きたという人もおられるかもしれない。が、私には春の息吹を真っ先に伝えてくれる白梅は神々しいばかりに美しい。
　　　　　　　　　　　　（２０１５年２月２６日）