時ならぬ雪

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　時ならぬ雪とはまさにこのことを言うのだろう。私の居住する名古屋の場合、相対的に雪は少ない。とりわけ三月の中旬にさしかかるこの時期に積雪に及ぶのは希有。
　昨日、午後から降雪の予報が出てはいたけれど、現実は晴れ間が広がっていたので、大丈夫とみて外出した。ところが、夕方になって、一天にわかに掻き曇り、激しく雪が降り出した。まさに「時ならぬ雪」だ。視界が遮られそうになるくらいの雪で、昨年１２月１７日に経験した「雪の恐怖」が頭をよぎった。「これは大変」とばかり早めにトンカツ店に入って夕食を済ませ、午後８時近くに帰り着いた。
　一時間ほどの道のり。その間、ほとんど雪は降り続け、周囲の空き地や車の屋根、果ては街路樹に至るまで、みるみる内に雪化粧に変わった。昨年１２月に、大正橋の上で横向きになってしまったタクシーとか、立ち往生して停車中の車が三台も連なっていたりし、かつ、自らの車も横滑りの恐怖を味わっていたので、無事帰りついて本当にほっとした。
　帰り着いて一時間後くらいから雪は小やみになり、今朝起床して窓外をみてみると、心配したほどの大雪にならなかったようで、内心少々悔しい思いに捉えられた。昨夜は無事帰りついて本当にほっとしたのに、いや、こんなことならもう少しゆっくりすればよかったなどと悔しい思いに襲われるなんて、我ながら、なんて身勝手なんでしょう。
　　　時ならぬ雪に見舞われ一夜明け窓外見れば矢車草
　　　身勝手とは承知しつつも一夜明け射し込む日差し恨めしきかな
　でも、これは結果論であって、大事に至らずに済んだ、そのことに全幅の感謝の念を捧げるのが筋というものでしょう。それにしても、三月のこの時期に「時ならぬ雪」とは！。一寸先は闇ということなのかな。
　　　　　　　　　　　　（２０１５年３月１１日）