食文化近況

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　ずっと以前に少し言及した記憶があるが、近年やたら目に付くテレビ番組にグルメものがある。その盛況ぶりは目に余るといってよかろう。テレビ放送が始まって十年ないし十数年は料理関係番組といえば、ＮＨＫのそれも教育番組で放映される料理教室だけだった気がする。それが高級料理を紹介する番組が制作されるようになり、次第に、シェフ等料理に携わる人々がクローズアップされ、中には人気芸能人並みに有名化して画面をにぎわす人たちも出てきた。さらに、それがＢ級グルメなどと称して日常料理にまで拡大し、大にぎわいを見せている。
　実際にチャンネルを変えてみると分かるが、必ずといってよいほど、どこかの局でグルメ番組が流されている。そしてその多くは私たち身の回りに見かける食堂場面なのである。高級店だの有名店だのではない。ごくごくありふれた店であることが少なくない。タイトルは「○○街を行く」だの「○○探訪」だのとなっていても、その実質は普通の店に入って食事しながらワイワイガヤガヤしゃべっている場面が多い。
　加えて、最近では豆腐を作ったりパンを焼いたりする、いわば台所状況まで映し出すようになってきている。私自身はあまりテレビを見ることはなく、グルメ関係と分かっただけでチャンネルを切り替えてしまうタイプの人間である。そんな私でさえ目につくのであるから、おそらく今やテレビ番組はグルメ関係番組の大洪水に見舞われているに相違ない。
　喜んでいいのか悲しんでいいのか判然としないが、個々の店の台所状況までカメラが入り込むようになってきたのは、尋常ではなかろう。日常店に入り込んでワイワイガヤガヤはもう芸能活動とは無関係。日常茶飯事の私たち庶民が行っている、何の変哲もない暮らしの一側面に過ぎない。歌手はもちろん落語にしろ漫才にしろ芸能人といえば、文字通り芸能の人だったのに・・・。この状況、平和ニッポンと喜んでいていいのかな。
　　　　　　　　　　（２０１４年９月７日）