ツツジ季到来

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　つい一週間前まで天候不順で農作物はもとより季節の花の開花も滞りがちだった。が、ここんところの初夏を思わせる絶好の好天気で、一気に新たな花々が開花し、自然界はにぎやかになってきた。長母寺を訪れた日は麓の木ヶ崎公園では色とりどりのバラがその大柄な花片を今を盛りと咲き誇っていた。さらに、私の居住するマンションのつい目の前を通る通りの路傍にはツツジの花々が所狭しと咲き誇っている。バラとツツジ、誰一人知らぬ人とてないほど代表的な初夏の花である。季節の移ろいのあまりの早さについていけないほどである。が、その移ろいも無感のままやり過ごしてしまえば、あまりに無念である。生きとし生けるものの一人でありながら、どこか時間を空費しているようでやるせない。せめて短歌の連作がならないかと筆をとった。
　　　内科医と歯科医とさらに餅店の並ぶ路傍にツツジ咲きをり
　　　銀行に向かう途中で足を止む所狭しとツツジ咲きをり
　　　にぎやかに咲くツツジなるこのわれも混じりて咲けるそれが良しなる
　　　ほめらるることなくて良し群がりて肩寄せ合いて咲く花で良し
　　　そこに咲くあたりまえのごとそこに咲くツツジの花のにぎにぎしかな
　　　ワーワーとスタンドの声の響き来る外野席なるツツジは楽し
　ツツジの花はまごうかたなく庶民の花である。肩を寄せ合い、頬を寄せ合うようにしてあふれかえらんばかりの風情で咲きそろう。にぎやかに咲きそろい、一輪一輪が一斉にコーラスを唄っているようにも見える。庶民の一人にしかなりようがない私。背伸びしようにもとりたてて際だった才が備わっているわけではない。ツツジの花、それはまさに庶民集合の花なのである。初夏が目前にやってきている。そう、ツツジの花、これからツツジの季節が到来するのである。
　　　　　　　　　　　（２０１５年４月２８日）