秋本格化

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　今日から１０月、秋本番である。私にとっての秋はザクロである。あのパックリ割れたザクロの姿は豪快で、かつ、ものごとがはじける象徴に思われ、勇気と気力をもらう気にさせられるのである。そのザクロが今にはじけんばかりに実を結ばせた姿を昨日、路傍に出くわした。
　今年の私は歯痛や口内炎、さらには左眼の手術に見舞われ、いまいち物事が予定通り前に進み得ていない。さらに１０日後あたりに右眼の手術を控え、それが済まないと万全の態勢とはいえない。そんな私であるが、今にも弾けんばかりに実を付けたザクロを目にするとしゃんとした気分になる。
　　　　赤い実の膨らみ来たりしゃんとする弾けんばかりザクロ鈴なり
　　　　我が頭すでにザクロの割れてをり秋本格化到来目前
　ご承知のようにザクロは果物といっても、リンゴやミカンのように甘い果物ではない。酸っぱくて、きゅっと口中が引き締まる。手術、入院、その後の治療を考えるとうんざりする。酸っぱくて厄介な経験、それをもう一度経験しなければならない。それが老いの身にのしかかってくる、などと考えると気力が失せる。気力が漲っている時でさえ大したことのできないこの自分。ザクロにあやかってなんとか弾けたい。なんとか気力を保持しつづけたい。
　　　　まだ老いを覚える気にはなれぬわれそれを信じてザクロを見つむ
　古い読者なら、私が毎朝１５分ほど、いわゆる勝手体操と称する体操を行っていることをご存知だろう。手足を勝手に動かす、文字通り勝手体操だが、それが続けられている間は「ザクロのように弾け続けられるだろう」、これが今の私の思いである。ザクロの秋、本格化の開始である。
　　　　　　　　　　　（２０１５年１０月１日）