おとそ気分

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　１月７日までを松の内という。かっては１５日までだったが、それだけせちがらくなってきた、というわけだ。松飾りのある内、要は正月気分の抜けきらない間と同意。年始に屠蘇散（とそさん）入りの酒を飲んだことを称して「おとそ気分」というがこれも同意。屠蘇散は山椒、桔梗、蜜柑の皮等々を混ぜた薬のこと。
　私は相棒たる彼女とまだ顔を合わせていない。初詣にも出かけていない。あれやこれやと正月気分とオサラバするための私的儀式（区切り）が残っている。初の英会話クラブの例会にも出たいし、弟と碁を打ちに行きたいとも思っている。
　だが、「あれが済んでから」とか「あの人に逢ってから」などと思っているとなかなか「おとそ気分」が抜けきらない。人間、何か理由をつけて先延ばししていると、なかなか先に進もうとしない。楽な方に流れるのが人間の性（さが）だから。
　そこで松の内までまだ二日あるが、思い切って、今の内から始動に入りたい。私に残された時間は多くない。あれもこれもは不可能。本年中に済ませたいと誓った万葉集読解。史料の整理その他から進撃開始である。
　万葉集の方が手招きしてしている、と思うことにした。その世界に入り込むことで、私の中に漂っている、いわゆる「おとそ気分」が一掃されると期待することにした。
　皆様方、なかんずく、若い方々にはまだ時間がたくさん残っている。存分に「おとそ気分」に浸ってほしい。松の内はもうたった二日しか残っていない。次のステップに進む為に、「おとそ気分」に浸ってほしい。
　私はマンション内のキンモクセイを見上げながら、私の「おとそ気分」にオサラバの手を振った。
　　　いざさらば屠蘇気分君来年の再会誓い相無事願い
　　　　　　　　　　　（２０１７年１月５日）