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Channel: 古代史の道
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いと憎し

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 「枕草子」は平安時代の随筆としてあまりにも高名である。その書き出しは教科書にも掲載されるほど有名で、以下のとおりである。
   春はあけぼの。やうやう白くなり行く、山ぎは少しあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。
 文末に「いとをかし」を補って読む。簡潔かつ的確で、散文というよりポエム(詩)といってよかろう。が、この書き出しがあまりにも有名なので「枕草子」を通して読んだ人は多くなかろう。
 実は「をかしきもの」に相当する段はほかにもあって、「すさまじきもの」、「憎き物」等があり、いずれも簡潔かつ的確。一例だけ紹介すると、第二十八段に「いと憎し」(大変いただけない)例の一つとして、次のようにある。
    また、物語するに、さしいでしてわれひとりさいまくる者。すべてさしいでは、童も大人もいと憎し。
 大略するとこうである。「会話するとき自分一人だけしゃべりまくる人、大人も子供も出しゃばりは、いと憎し」。
 会話に限らず、さしでがましい輩(やから)は世に掃いてすてるほどあって、カラオケでマイクをなかなか離そうとしない人、自分の知っている曲ばかり選択してほかの人にも歌わせようとする人。やたらこちらに話しかけてきて「だよね、だよね」と相づちを求める近所のおばさん、等々。
 口数が少ない方の私などはそうした人々に押されっぱなしで、辟易することしきりである。が、清少納言と異なって、必ずしも「いと憎し」とは思わない。出しゃばりは出しゃばりで、座を盛り上げる面があり、要は「過ぎたるは及ばざるがごとし」なのだろう。
           (2017年1月12日)
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