奇跡

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　プロ野球の話なのだが、私はいわずと知れた中日ドラゴンズフアンだ。滅多に野球の話題は持ち出さないが、熱烈なドラゴンズフアンだ。したがって隠れフアンというべきか。
　外出先から帰宅して、テレビをつけたら９回裏のドラゴンズの攻撃場面。ヤクルトに２対０で負けていて、かつ、２アウトの場面、いわば敗戦直前の場面だった。多くの方が野球をご存じのことと思うが、９回裏２アウトといえば、あと一人アウトになればゲームセットという、いわば、どん詰まりのどん詰まりの場面だ。負けを覚悟して、ゲームセットになればチャンネルを変えようと構えていた。
　あと一人となった大島選手がヒットで出塁。おっとと思って見ていると、次のビシエド選手もヒット（二塁打）。次打者のゲレーロも続けてヒット。一気に二人がかえって２点を取り同点。続く藤井選手が決勝の逆転打を放ち、ゲームセット。まさにあっという間の逆転劇だ。
　９回２アウトからの逆転はそうそうあることではない。四球やヒットで塁を埋め、逆転ホームランというケースが記憶にあるくらいだ。一つのアウトも取られず、四球で出ることもなく、すべてをヒットでつないでの逆転だ。つまり、４連打しての逆転だ。しかも私がテレビをつけたら、たまたま始まった場面だったのだ。
　これは奇跡といってよかろう。９回２アウトから４連打以上して逆転したケースがあればご教示願いたいものである。
　この世に奇跡って本当にあるんですね。その奇跡の瞬間に、偶然に立ち会えて、すかっとした気分に見舞われた。しかも、奇跡を起こしたそのチームが隠れフアンならぬ中日ドラゴンズ。滅多に野球を見ないこの私がたまたま出合ったテレビの場面。それが今夜の奇跡だったとは。私は不思議な気分に襲われた。
　　　　　　　　　　　　（２０１７年５月２６日）