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水色の微玉

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 昨日、古代史同好会メンバー6人打ち揃って地元愛知県内の史跡を巡り歩いた。その模様は別稿に起こし、発表出来るかと思うのでここでは、矍鑠(かくしゃく)たる老人とガラスの小玉について記してみたい。両者は全く無関係なのだが、私の中ではつながっている。矍鑠についてはつい先だって述べたように、若い頃から私が憧れてきた事柄で、「元気闊達な老人」という意味である。他方、ガラスの小玉とは今回の史跡めぐりで、もっとも驚嘆し、印象深かった出会いである。
 朝日遺跡の資料館を訪ねた際、その豊富で多彩な出土品に圧倒されたのだが、中でも全く目立ちそうにないガラスの小玉に吸い寄せられた。小玉といっても並みの小玉ではない。精度の高い天眼鏡でないと分からないくらい小さな小さな微玉なのである。壺の口縁に埋め込まれた水色の美しいガラス玉である。2000年前という途方もない古代、弥生時代にガラス玉を作り出していたことが第一の驚きだが、あの米粒よりも小さな美しい微玉をどうやって仕上げたのか、その方法、私には見当もつかない。そしてもっとも不可思議なのはその微玉をなにゆえ土器の口縁などに埋め込んだのだろうという点だ。念入りに仕上げられたであろうその微玉は現代のダイヤモンドなど足元にも及ばない貴重品だったろうに、と思うとぞっとするのである。人にはとうてい気づかれそうにない微玉。しかも木の実だの稲だのを蓄える壺に・・・。考えられるたった一つの理由は壺の制作者が制作者自身のために埋め込んだことだ。来る日も来る日も退屈な壺作りをさせられていた壺職人が、自分用の壺にだけそっと忍ばせたと考えられるのだ。もしもそれが女職人だったとしたらその行為は彼女にとって密かな慰めであり、つつましやかな贅沢だったのではなかろうか。こんな不思議な微玉に巡り会おうとすれば、あちこちと歩き回れる矍鑠たる老人でいなければならぬのではないか、勝手に私はそう思い込こんだのである。
            (2014年10月31日)
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