もてる？

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　私は二十代の頃、とんと女性にもてなかった。二十代と限定したのは、２７歳で結婚したので、女性と交際できたのは二十代だったからで、それ以降のことは不確かなので。十代の頃はおぼこかったので、浮いた話はゼロに近いと言ってよい。
　もてない原因はいうまでもなく、私の不器用さとスタイルの悪さだったに相違ない。猫背気味で不格好な歩き方をする小男など、私が女性なら見向きもしなかったろう。「いや、男はスタイルじゃなく、内容だぜ」と粋がってみても、その内容たるもの、二十代前半の私には人に誇れるようなものは何もなかった。なにをか言わんやである。
　男盛りの二十代がこの有様だから女性には生涯縁がないと覚悟して生きてきた。ところが、ところがである。私は４５歳の時に離婚を経験し、以来、女性に徐々にもて始めたのである。不器用が器用になったわけでもなく、猫背がぴんと延び、小男が大男になったわけでもない。まして、私の内容が良くなってきた、などということはない。
　五十代の初めに飲み屋のママさんと知り合いになったのを手始めに、あちこちの女性に声を掛けられるようになった。英会話クラブで知り合った人、よく通う喫茶店や料理屋で知り合った女性等々である。知り合った女性とあちこち一緒にバス旅行に出かけたりした。独身になって以降、ほとんど退屈になった経験がない。その内に、今の相棒と出会い、１５年ほどになる。娘のように若い彼女だ。
　こんなわけで、私は人生後半になってからもてるようになった。「もてる？」わけではなく、言葉の意味が違うかもしれない。たんに「人のいいお年寄りだから」くらいの気持で気楽につきあっているかも知れないけれど・・・。
　私としては私の内容がよくなってきたからと思いたいし、思っていたい。こんなわけで、人生はいつなんどき変化するか分かりませんね。
　　　　　　　　　　　　　（２０１７年８月２9日）