飛んでけ弱気の虫

日々つれづれ－１６トップへ
　最近私はふっと弱気になることがある。「これも歳のせいか」と思っていた所、一通の手紙が舞い込んだ。「万葉集読解の愛読者です。是非完結して下さい」という趣旨の文面が綴るられていた。
　これまで私は長年月にわたって、「たった一人でも読んで下さる方がいれば」と思い、それを励みに「万葉集読解」を続けてきた。それなりに徐々に読者が増えてきていることは実感している。が、現実に、こうしてお手紙をいただくと、緊張する。名もしらぬ、顔を合わせたこともない人からの一通。住所は私の著書の一つ「真正面からの魏志倭人伝」に記されているので、そこから分かったのでしょうか。
　さて、私は「万葉集読解」の完結を公言している。お手紙をいただいて、その私が弱気になってどうする、と自分で自分を叱りつけた。日頃、相棒に「年齢は関係ないでしょ」と言われ、「どちらが先に死ぬかも分からないでしょ」と叱られている。何かにつけて、「これも歳のせいか」と言うと、「しっかりしてよね」とお小言が飛んでくる。娘のような若い相棒に叱られてばかりいては立つ瀬がない。
　今回届いた一通の手紙によって、確実に読者の一人が存在していることを知った。精神的には大きな励みになり、叱咤激励を得た思いになった。
　　　年齢は言い訳じみて情けなや弱気の虫は退治しようぞ　　（桐山芳夫）
　考えてみれば、物事がうまくいかないと、「これも歳のせいか」と言いたくなる。が、そう言ってしまえば、「ジ・エンド」である。うまくいかないことの言い訳にしているようで情けない。いったい、何のために、毎朝、毎朝、体操をし、何十年も続けているのか。健康にして健全な心身の維持のためではなかったのか。弱気に傾くと、人間は気力も萎えてくる。ここで一度ねじの巻き直しだ。
　　　　　　　　　　　　　（２０１８年３月６日）