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今更悔いても

日々つれづれ-10トップへ
 ここ数年、とりわけ今年に入ってから「これまで自分は親孝行をしてこなかったな」とつくづく思うようになった。父親は相当前に亡くなっているが、母親が亡くなってからでももう10年になる。生前であればともかく、10年も経た上に私自身が老齢期に入ってかなり経っているのに、親孝行云々とは笑止千万な話だが、生前の父母のことを思うと、胸が張り裂けそうな思いに捉えられるのである。
   ちちはははとうの昔に行きませりセキレイの来て車前よぎりぬ
   孝行のひとつせぬまま墓にきて合掌すれば嗚咽来たりぬ
   後悔は先に立たずと立ち尽くす老いを迎えて父母を知る
   落葉を浴びつつ悔いる親不孝この馬鹿者と自ら叱る
   強風にイチョウ群葉舞い上がる父母と食べたる団子なつかし
 人生とは何と苛烈な摂理だろう。わがまま言って困らせた思い出しかないこの身。今更どうしようもないと思いつつ悔やまれる日々なのである。
 私は強情でありながら、他方ではかなり忍耐強い性格だろうと自認している。人様の前で涙を見せた記憶がない。その私がたった一度だけ号泣したことがある。母の葬式の場で挨拶した際、話が「人様に迷惑をかけることだけは駄目」と母が語ったくだりに及んだときのことである。極貧生活に長年耐えながら一円たりと人から借りようとしなかった母。必死に働いて6人もの子を育て上げた母。挨拶の途中で言葉が出なくなり、思わず私は嗚咽を始めてしまったのである。私はといえば、何一つ孝行らしい孝行をしていない。桜見物に鶴舞公園に連れ添ったり、車いすを押して買い物に出かけたりしたことなど孝行の入口にも入らない。両親の死後、自らの親不孝を悔いても悔いても始まらない。それを知っていただきたくて一文をしたためた次第である。
            (2014年11月28日)
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