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不可忘却

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 私が思うに忘却には二種類ある。ひとつは物忘れである。「あれっ、あの人誰だっけ」とか「この漢字なんと読むんだっけ」といった類の、いわゆる単純な物忘れである。花の名、鳥の名等々この種の物忘れは枚挙に暇がない。
 この単純な物忘れは、若いころからあって、笑えない失敗も多い。とりわけ、私のような物忘れの著しい人間にはつい先刻覚えたばかりの人の名なのに、思い出せなくていらいらすることがある。
 もう一種類の忘却だが、簡単に忘れる筈のない事項が思い出せない忘却である。この忘却を何と呼んでいいか分からないが、仮に不可忘却と呼ぶことにすると、不可忘却は気になって気になって仕方がない。
 いい例が先(6月6日)に紹介した朝日遺跡の例である。わざわざ現地の資料館まで足を運び、強く印象に残った遺跡でありながら、なんとコロリと忘れてしまい、その遺跡名さえ忘却の彼方に去ってしまっていたのである。
 年月を経た朝日遺跡の例でなくとも、なんと、なんと、今取り組んでいる万葉集読解にも起こるのである。考えに考えて文章化した筈なのに、読み返すと、「あれっ、こんなことを書いたっけ」ということがしばしばある。情けないやら、恥ずかしいやらだが、不可忘却の最たるものにはこんなものまであるのである。神経を集中させて文章化した筈なのに、否、集中化した箇所ほど覚えていないのである。
   つい昨日ものしたばかりの対象を思い出せないことさへあるや  桐山芳夫
   くるくると回る矢車草の花見れば見るほど記憶彼方に      桐山芳夫
 こうした不可忘却は、加齢化現象の始まりを示すものか、それとも私特有の現象なのか判然としない。
            (2018年6月14日)
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