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Channel: 古代史の道
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烏賊の丸焼き

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 これは子供時代の思い出である。私は名古屋出身なのだが、幼児期および小学校時代、岐阜県笠原町で過ごした。多治見市の近くの陶磁器の町である。両親が一時的にそこに疎開していたのである。
 夏になると、名古屋から祖母が孫の私を連れにやってきた。あるとき、知多半島の新舞子海水浴場に連れていってくれた。ご承知のように岐阜県には海水浴場がない。海に面している所がないのだ。私は海をみてその広大さに口もきけないほど仰天した。が、今回は海そのもののことではない。
 実は、海で泳いだ後、海水浴場の片隅で烏賊の丸焼きをやっていたので、祖母からもらったお小遣いでそれを買った。いやあ、その美味しかったこと、美味しかったこと。後にも先にもあんな美味しいものを食べたことがない。
      海水浴烏賊の丸焼き忘られず         (桐山芳夫)
      海を出て猛暑の烏賊の焼けこげて       (桐山芳夫)
      炎天下醤油烏賊をほおばれり         (桐山芳夫)
      幸せは炎天烏賊に尽きてをり         (桐山芳夫)
      夏の海人に告げたき烏賊の美味        (桐山芳夫)
 烏賊と夏の季語を入れなければならない窮屈な俳句だが、次々と出来てきた。小学生の私にとって、かくも強烈な思い出として、印象に残っている。
 たかが烏賊、ただ丸焼きしただけの烏賊。が、海水浴場で食べた、あの丸焼きの烏賊ほど美味しかったものはこれまでにない。ふぐ料理、蟹料理、飛騨牛料理等々。ある時はもてなしを受け、ある時は友人や彼女と二人で、私なりに美味と言われる料理を経験している。が、そのどれもあの烏賊の丸焼きには及びもつかない。美味とは一体何だろう。
            (2018年8月5日)
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